
ビグスクはビッグスクーターの短縮形
スクーターの大きさを分類する決まりはありませんが、免許制度に準じて、概ね次のような分け方が普通かと思います。
- 原付一種のスクーター(50ccまで)
- 原付二種のスクーター(125ccまで)
- 軽二輪のスクーター(250ccまで)
- 中型のスクーター(400ccまで)
- 大型のスクーター(400ccオーバー)
5つの分類で『ビッグ・スクーター』と言うなら、3項、4項、5項が該当すると思います。
ところが『ビグスク』となると、わたしの語感では、3項の中でも150ccとか200ccを除いて特に250ccクラスだけを指すようなイメージです。
ビグスクの歴史
ビグスクの始まりはホンダ・フュージョン
戦後復興の時代の富士ラビット号や三菱シルバーピジョン号はともかくとして、大型スクーターとしては、1984年にホンダがフリーウェイを発売しましたが、現在のビグスクの始まりは、1986年(昭和61年)に発売された、ホンダ・フュージョンでしょう。
スクーターとしては異例のロー&ロングの設計でした。
ロングホイールベース(1,625mm)と低シート高(685mm)で、わたしが最初に感じた印象は、ホンダがアメリカンタイプのスクーターを作ったということでした。
通常のリッターバイクではホイールベースは1,500mm程度ですが、それよりも100mm以上長いのは正にアメリカンバイクそのものです。
シート高さも通常のバイクは800mmですが、これもアメリカンバイク並みの700mm以下です。
さらに、タンデム(二人乗り)を意識した大きなシートと、このスタイルにしては大きな12Lの燃料タンクなど、長距離ツーリングを意識したクルーザー的なスクーターでした。
しかし、まだ、時代に合わなかったのでしょうね。
あまり売れませんでした。
ヤマハ・マジェスティ登場
ホンダ・フュージョンから遅れること9年後の1995年(平成7年)にヤマハが発表したマジェスティが、ビグスクブームの火付け役になりました。
ホンダ・フュージョンが約50万円だったのに対して、20万円も高い70万円で高級路線を打ち出しました。
この高級感が若者に受けて、おしゃれな街乗りツールとして大ウケして、翌1996年にはバカ売れして、数々のシリーズ車種を産み、モデルチェンジを繰り返すことになります。
その後、ビグスク・ブームとなり、ホンダのフォルツア、シルバーウイング、スズキのスカイウェイブ、ヤマハのマグザムなど、ビグスクが次々と発売されました。
ついには、冒頭に示したスズキ・ジェンマのような、最初から改造車のようなビグスクまで出てきたのです。
ビグスクはツーリングより街乗りが似合う
おそらく開発者の意図としては、老夫婦によるゆったりしたロングツーリングをイメージして、高級感あふれる設計をしたのではないかと思うのですが、売れ筋は街乗りの若者に移ってしまいました。
その理由を考えてみると、納得行く点が幾つかあります。
物入れが便利
車種によっては60リットルを超える大容量の収納スペースがあり、従来のバイクの概念を変えてしまいました。
通勤や通学のちょっとした手荷物は全部入ってしまうので、無骨にゴムベルトでカバンを結わえたり、リュックを背負う必要がありません。
上の写真は、スヤマハ・マジェスティですが、ギターが入ってしまいました。
スタイリッシュに、日常の足として使える便利さが注目されたのでしょう。
足つき性が良い
ロー&ロングの設計なので、足つき性が良いです。
特に、ヤマハのマグザムなどはシート高がわずか655mmで、原付バイクよりも低くて地べたに座っているような感じです(オーバーな表現ですが)。
街乗りでは信号待ちや渋滞が多いので、しばしば停止するため、足つき性が良いことは抜群の安心感につながります。
靴を選ばない
ツーリングに出かけようとするなら、バイク専用のブーツやシューズを履きますが、街乗りでいちいちそれを求められたら面倒で敵いません。
ギア付きのバイクであれば、左足の甲の部分でギアペダルを蹴上げるので、履く靴が限定されます。
また、紐付きのスニーカーは履かないように指導されます。
ビグスクでは、足置き場所が横棒のステップではなく平面になっているので、極端なことを言えば、サンダルでも下駄でも女性のヒールでも運転ができます。
(褒められたことではありませんが)スクーターは、足元のオシャレを維持したまま自由に乗ることができ、しかも、雨の日でも前輪からの泥跳ねを受けずにすみます。
この辺も、街乗りバイクとして好まれる理由です。
ちょっとした高級感がある
今まで書いたことは、原付バイクにも通用する項目でしたが、ビグスクには、原付バイクにはない高級感があります。
そもそも価格が高いです。
原付バイクは15万円~20万円ですが、ビグスクは50万円~70万円に跳ね上がります。
車体が大きいから立派に見えますね。
原付バイクは、全長が1,700mm程度ですが、ビグスクになると2,300mmを超える車種もありますから、だいぶ大きいです。
車体の大きさとあいまって、メーター周りの装備品やボディの装飾がきれいになるので、ここでも高級感が演出されます。
ビグスクがチャラいのはなぜか
ここで言うビグスクとは、250ccのスクーターのことです。
400ccや500ccオーバーのスクーターは含みません。
街乗りツールとして注目された理由は、前項で書いたとおりですが、逆にツーリングに向かないという理由もあります。
250ccではロングツーリングには力不足
エンジンや機構部品が見えないように巧みにカバーしながら、ラゲッジスペースを確保するために構造の工夫をしています。
サイズも普通の250ccバイクより大きいので、結果的に車重が重くなりすぎて、高速道路でタンデムツーリングをするには力不足です。
開発者の狙いとしては、老夫婦のゆったりとしたロングツーリングをイメージしたのかもしれませんが、ビグスクで高速道路をゆったりとは走れません。
時速80キロくらいまでが適正であり、100キロともなるとアップアップになり、余裕などありません。
高速道路のツーリングが無理なら、街なかで走ろうということになりますよね。
ギア操作なしのバイクはやっぱり物足りない
よく言われることですが、オートマチックのバイクが愉しいかということです。
わたしが、リターンライターになったときに最初に選んだバイクは、ヤマハTMAXでした。
ここでビグスク呼んでいる250ccスクーターとは一線を画したスポーツバイクです。
しばらくは、喜んで乗っていました。
ヤマハがスポーツバイクのカテゴリに入れるだけあって、たしかに速かったしワインディング走行でもキビキビ走ってくれました。
だけど、喜んでいたのも半年間でしたね。
半年後には、「Go! バイク王」に電話していました。
結局、スクーターでは、どんなに走りが良くても、本来のバイク乗り感覚では飽きて来るのです。
そうなると、遠出するツーリングではなく、便利な街乗りツールとしてしか生きる道がないのですよ。
街なかキングを目指すカスタム化
ツーリングに向かないとなると、街なか便利ツールになります。
高価な買い物なので単純に便利なだけではなく、カッコよく目立ちたい心理の若者にヒットしたようです。
こうして流行りだしたのがカスタム化、つまり自分なりの改造ですね。
よくやられる改造のポイントは、だいたい次のような項目です。
- 外装(ペインティング)
- 車高を下げる
- マフラー交換
- ハンドル交換
- シート交換
どの項目でも、改装するとチャラチャラした感じに見えてしまいます。
中居正広さんのカスタム化
中居正広さんが、ヤマハ・マグザムを購入して、大幅なカスタム化をしたことがテレビのバラエティー番組で紹介されました。
ウワサによると、マグザムの購入費を含めて200万円かかったとか。
テレビの画面を参考にしてイラストを描いてみたのですが、こんな感じのスクーターになったようです。
総額200万円と言うと、マグザム本体が70万円なので、改造費用が130万円の計算ですから改造費用が本体のほぼ2倍ですね。
こういうバイクを、わたしはチャラいと言っているのです。
200万円の予算なら、わたしなら、バイクのグレードを上げますけど好みは人それぞれですからね。
ビグスクブームが去って
ビグスクは重かった
街乗りに便利なスクーターを求めていたとすると、実はビグスクには問題があったのです。
それは、重くて、でかくて、取り回しが厄介だということです。
高速走行のロングツーリングを求めず、街なかで便利に乗るためだけならば、あのデカさ、ホイールベースの長さ、200kgを超える重さは必要ないのです。
実際に、狭い車庫から引っ張り出すのに、毎回苦労をしていたオーナーが多かったのです。
150ccクラスの時代到来か
街なかで実用的に乗り回すならば125ccの原付2種スクーターでも十分なのですが、いざとなれば高速走行も可能なバイクを求めているならば、125ccよりちょっと大きな150ccクラスのスクーターがベストだと気がついたのです。
250ccが軽二輪と言われるのに対して、150ccクラスには軽軽二輪(KK2輪)という呼び名が出来ているようです。
小回りが利いて、そこそこ走る、実用的なスクーターは150ccクラスです。
ヤマハ・マジェスティS(155cc)とホンダPCX150が商品化されています。
価格は35万円程度で、全長が2m程度と小型なので、過去のビグスクと比べると安価で実用的になっています。
ほかに、ヤマハNMAX155とトリシティ155がありますが、ちょっと高いです。
Leave a comment