
リターンライダーとして最初に選んだバイクがTMAX
わたしが、長いサラリーマン生活を終えて、リターンライダーとして最初に購入したバイクが、ヤマハTMAXでした。
2009年のことなので、認定型式はSJ08Jと呼ばれる3代目の車体です。
大型スクーターに乗ってみたかった
2005~6年頃のビッグスクーターブームを横で見ていた現役時代。
あんなスクーターにゆったり乗ったら気持ちいいだろうなぁ、などと憧れをもって見ていました。
定年退職を迎えた2009年に、待ちに待ったリターンライダーの誕生です。
すでに頂点を越えたビグスクブームは下火になっていましたが、あこがれの目で見ていたわたしの熱はまだくすぶっていたのです。
大型スクーターに乗ってみたい、これが購入の原動力です。
60歳と年を取ったので、オートマチックで楽な乗り方への期待感もあったと思います。
大型スクーターと言っても、もともとがバイク乗りなので、カスタム化と称してわざわざ曲がりにくくロー&ロングに改造してチャラチャラしたイメージの250ccビグスクは選びたくありませんでした。
純粋に走りを楽しむ大型スクーターはなんだろうか。
当時、250ccを超える大型スクーターの選択肢は4車種だけでした。
- ヤマハ TMAX
- スズキ スカイウェイブ650
- スズキ スカイウェイブ400
- ヤマハ グランドマジェスティ400
- X ホンダ シルバー ウイング600と400は、生産中止になっていました。
ほかに、下のような輸入スクーターという選択肢もありましたが、後々のメンテのことを考えると食指が動きませんでした。
- GILERA GP800ie
- GILERA Nexux500SP
- aprillia Scarabeo400ie
- VESPA GTS300ieSUPER
- GILERA FUOCO500ie(前ニ輪スクーター)
- ADIVA AD3W 400(前ニ輪屋根付き)
スポーツスクーターはTMAXしかなかった
バイクに乗る楽しみといえば、そのスポーツ性能、つまり走りの性能が重要です。
そう考えたら、国産4車種の中では、TMAX以外の選択はありえません。
その当時のヤマハのweb siteでは、バイクのラインナップ分類において、TMAXはスポーツバイクのカテゴリに入っていて、スクーターの仲間には表示されませんでした。
それだけ、オートマチック・スポーツとして、ヤマハがTMAXに寄せる思いが強かったのでしょう。
TMAXのスポーツ性能重視の設計思想はあらゆる観点で確認できますが、その最たるものはスクーターの形状でありながらユニットスイングを採用しなかったことにあります。
ユニットスイングは、重たい変速機構が後輪と一緒に動くので、いわゆるバネ下重量が大きくなり路面追従性が悪く、スポーツ走行性能を損なう原因になります。
わたしがTMAXを選んだ最大の理由はここにあります。
日本の免許制度にしばられた400ccには魅力を感じないし、もう一つの候補となったスカイウェイブ650はスポーツバイクではなく、クルーザーに見えました。
こうして、ほとんど悩むことなくTMAX購入が決まったのです。
当時の雑誌記事に、0→100m全開加速データが掲載されていました。
- TMAXは7.27秒で最速
- グランドマジェスティ400は7.53秒
- マグザム250が7.67秒
- マジェスティ250が7.72秒
- スカイウェイブ250が8.21秒
この中では、エンジンが500ccと大きいから当然だけど、やっぱりTMAXは速いですね。
TMAXが納車されました
後ろ姿がかっこいい
ピカピカの青色のTMAXが納車されて、ひと目見たときの感激をよく覚えています。
まず、なんてかっこいいんだろうと思いましたね。キリッとした目つきの精悍な顔つきは、仮面ライダーの撮影にそのまま使えそうです。
一般に大型スクーターのリアビューはケツがでかくてもっさりしたイメージが多いのですが、TMAXのケツはキリッとヒップアップして美しく、スポーツバイクらしくて、すごくかっこいいと思いました。
足が届かない
早速跨がってみました。
足が届かないと言うのはいささかオーバーですが、つま先立ちで、いわゆるバレリーナ状態でした。わたしの身長は175cmですから、この年代では大きい方でしょう。
多少短足気味ではありますが、バイクで足が届かない不安を感じるとは思いませんでした。
カタログデータによるとシート高は800mmですから、オフロード車と比べるとそれほど高いわけではありません。
跨がって分かったことですが、実はシート巾が広いので数値以上に足の長さを要求されるのです。
とにかくエンジンを掛けて道路に出てみました。
初めての大型スクーターでの走行は、フラフラしておっかなびっくりでした。
ガソリンを入れなくちゃと近くのスタンドに立ち寄ったのですが、給油機の前で停止するときに危うく転びそうになりました。
危ない、危ない!
ふらつきながらの走行なので、道路の真ん中を走らないと危なくて仕方ありません。
すり抜けなんて怖くてとても出来ません。
車庫入れが重い
店舗で納車を受けて、途中でガソリンを入れて、なんとか家までたどり着きました。
さて、我が家の狭い庭の隅にある屋根付き車庫に入れなければなりません。
屋根付き車庫と言えばかっこいいですが、要は自転車置き場です。
ちょっとした段差になっている飛び石を超えて入れるのですが、最後は何回か切り返しをしながら所定の位置に収めます。
これが、重いの何の、カタログデータでは車両重量は222kgです。
以前乗っていた750ccよりも取り回しが重いような印象です。
初日の印象はこんな感じでした。
あちこち走ってみると
足が届かない問題は停止してるときだけで、走り出せばまったく問題なく快適です。
街なかのダッシュでは、負ける気がしません。
実際にゼロから発進すると速いんだけれども、時速50kmを超える辺りで息をつきます。
60キロを超えるとまた加速が良くなるのですが、発進加速が速いだけにここでの息継ぎが目立ちますね。
高速走行では問題ない
ヨーロッパの国をまたぐ高速道路を走るために設計された車体は、巡航速度140kmを前提に設計されたなんて記事も読んだ記憶があります。
日本の高速道路は時速100kmですから、問題になるはずがありません。
100キロの定速走行は、実に快適です。
大型の風防が風を遮ってくれるので疲労感も少ないです。
時速100キロで5千回転程なので、そこからの追い越し加速はアクセルの一捻りで簡単に加速します。
オートマチックだからシフトダウンなど、端から必要ありませんけどね。
ある日、メッチャ速いBMWの集団にくっついて走ったことがあります。
その集団の速いこと速いこと、四輪自動車の列に追いつくとしばらく後ろにつけて、空きを見つけると途端に追い越してあっという間に前方に消えてしまいます。
これは面白そうだと、6~7台の集団の殿(しんがり)についてみました。
自動車の後ろにつけた集団にくっついたのです。
次々に追い越して先に行きますから、こちらもついていきます。
ぬおわくらいまではついて行けるのですが、そこからぬやわまでが伸びません。
どうやら、この辺がTMAXの限界のようです。
ここが限界だとしても、振動が出るとかボディが歪むとかの悪い変化はありません。
おそらくBMWの集団はふわわまで達しているのではないかと思います。
そして、彼らが自動車に阻まれたところで追いつく、の繰り返しでした。
これだけ激しく走っても、操作はアクセルグリップを捻るだけですから、楽なもんです。
ワインディングでも意外にしっかりした走り
高速道路では快適に走ってくれたTMAXですが、ワインディング・ロード走行ではどうでしょうか。
500ccのエンジンには大きすぎるボディで、しかもオートマチックでまともな走りができるのかと半信半疑でした。
下手したら原付のロードスポーツに後ろから煽られるのではないかなどと心配していました。
ところが峠道に入ってみると、まったく何の違和感もなくスイスイ走ります。
カーブでの倒し込みも抵抗なく素直に従ってくれます。
ギアチェンジが出来ないので、コーナーが続くワインディングでどうするのかと思っていましたが、アクセルを捻るだけで、シフトダウンしてくれます。
いや、実際には無段階変速でギアチェンジがないので、シフトダウンという作業ではないのですが、自動的に低速側にシフトするので、思うようにエンジンブレーキが効くし、加速もしてくれます。
操縦が簡単であることは間違いありませんが、あまり楽しくない面も否めません。
TMAXが悪いわけではなく、ライダーのわがままですから、どうしたもんでしょうかねぇ。
やはり、エンジン特性なのか、小さなワインディングよりも高速コーナーが続く道路が走りやすいですね。
スクーターの格好をしているけれども、スポーツバイクと言って間違いありません。
日常生活では
高速走行もワインディングでもスポーツバイクの走りを見せてくれたTMAXの日常使用ではどうでしょうか。
日常の街なかの走りでは、信号待ちや渋滞の列などがあり、しばしば発信と停止を繰り返します。
こんな時に、ノークラッチのありがたさを本当に感じます。
高速走行を快適にこなし、峠道でもスポーツバイク並みに走るTMAXが、市街地走行でも使いやすいとは、完璧でしょうか。
大型スクーターに望まれる収納スペースは、あまり大きくないのです。
小さなヘルメットが1個だけしか入りません。
大型スクーターならヘルメット2個が普通なのですから、走りを優先したためにその辺のユーティリティを削減したということなのでしょう。
ついでに言えば、荷物を積むキャリアや、買い物かごはありません。
原付スクーターでは有力な荷物スペースになる床面も平面ではありませんので、荷物は置けません。
スクーターとしては積載能力は小さいと言わざるを得ません。
しかし、スポーツバイクとして見ればシート下に空間があるのだから、マシな方です。
総合得点をどう付けるかは、人それぞれでしょう。
半年後に売却した
新車で購入して、わずか半年で売却してしまいました。
最大の理由は、腰椎の手術をしてしばらくバイクに乗れなくなったことです。
手術をして背骨にボルトを打ち込まれて、当分の間はバイクに乗れない身体になってしまいました。
やむを得ずTMAXを売却したのですが、この決断をした時には身体のことだけではなく、TMAXがつまらないと言う感覚の方が大きかったと思います。
つまらないと言うか、もの足りないというか、要するにギアチェンジを操作する権限を取り上げられてしまったことです。
長いことバイクに乗ってきた習性で培ってきた本質は、バイクに乗ると言うことは楽な移動手段を求めているのではないのです。
もしもふんだんにお金があれば、楽な移動手段なら運転手付きの乗用車を持てば済むことです。
しかし、バイク乗りという人種はそれでは満足しないのです。
自分で操縦する感覚が好きなのです。
ここで、なぜ、あなたはバイクが欲しいのですかと問われたらどうでしょう。
楽な移動手段を求めているわけではないでしょう。
人それそれ要求レベルが違いますが、楽な移動手段ではないはずです。
それが、わたしにとっては、オートマチックのバイクは合わなかったということです。
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