
まだバイクに十分に慣れていない初心者や、何十年振り乗るリターンライダーにとって、Uターンは案外イヤなものです。
基本的なUターンの方法は、『足が届かない大型バイクで安全にUターンする方法』に書いていますので、まだでしたら先に読んでください。
基本的な考え方は分かりましたが、実際に公道を走る際に注意をしなければならないのは、坂道でのUターンです。
下り坂でのUターンはまだなんとかなりますが、特に危険だからやってはいけないのは、上り坂でのUターンです。
上り坂でバイクのUターンをしてはいけない
原付スクーターの様に軽量でベタ足がつくバイクであれば少々無理なことをしてもなんとかなりますが、400ccを超える大型バイクでは、ちょっとバランスを崩しただけで立て直すことができずに転倒してしまいます。
平地であればなんとかなるところが、傾斜地ですとどうにもなりません。
特に上り坂でのUターンは、絶対禁止です。
その理由を考えてみましょう。
主な理由が3つあります。
立ちごけのリスクが高い
坂道の傾斜の高い方を『山側』、低い方を『谷側』と表現します。
左側通行の公道でのUターンでは当然右旋回になりますから、Uターンをしている最中は、左側が山側で、右側が谷側になります。
バイクでUターンをするときには、旋回する方向、つまり右側に車体が傾きます。
そうすると、万一Uターンが失敗して途中で停止した場合は、右側の脚をつこうとしますが、谷側なので足が届きにくいのです。
上のイラストに示したように、
「おっとっとっと!」
と爪先たちになっても支えられれば良いのですが、傾斜がきつくて足が届かない場合は、車体が倒れて最悪の場合は下敷きになってしまいます。
サイドスタンドが効かない
Uターンの途中で停止してしまった場合に、なんとか立ちごけを凌いだとしても、サイドスタンドが効かないので、態勢を立て直すのが非常に困難な状況になります。
バイクのサイドスタンドは、車体を左に傾けて、前輪、後輪、サイドスタンドの3点で支える構造になっていますね。
しかし、サイドスタンドが山側にあると、重心位置が3点の範囲から外れてしまうので自立できなくなります。
そのため、坂の中央で停止してしまうと、右足一本でバイクを支えながら身動きできずに、やがてケガをしないように静かに倒す方法を選ぶしかなくなります。
平地だと思っている地形でも、僅かな傾斜でサイドスタンドが効かなくなることがあるので普段から注意が必要です。
上り坂のUターンは大回りになる
バイクの旋回半径は、当然ハンドルの切れ角つまり前輪の曲がり角度によって決まります。
カタログに掲載される最小回転半径は、バイクを直立させてハンドルを最大角度に曲げて(フルロックと言います)旋回したときの半径を示しています。
しかし、バイクは旋回する方向に倒す(バンク角)と、回転半径が小さくなる性質を持っています。
計算上の話ですが、バンク角を45度まで寝かせることができれば、ハンドル操舵角を1.5倍にしたのと同じ効果があります。
わたしの実力では、Vストローム650を45度に傾けるなど到底出来ませんが、仮に45度まで倒したとすれば、Vストローム650のカタログの舵取り角は40度ですが、60度までハンドルを切ったのと同じ回転半径になるのですから、小回りが効くのも当然です。
さて、やっと坂道の話に入ります。
上り坂で右旋回をするときに、旋回の中心は右側ですから、地形で言うと谷側になります。
地面が谷側に傾いているので、バンク角が取りにくいのです。
地面と同じ角度まで車体を傾けても、実質的なバンク角はゼロなのです。
ましてや、直立して旋回したらバンク角はマイナスになってしまいます。
だから、上り坂でのUターンは、大回り(回転半径が大きい)になりやすいのです。
逆に下り坂でのUターンは、自然にバンク角が大きくなるので小回りがしやすくなります。
上り坂でのUターンはスイッチバックで乗り切る
ここまで説明したように、上り坂でまともにUターンをすると危険です。
でも、実際にツーリングをしていると、上り坂でもUターンをしなければならない場面に遭遇することがあります。
そんなときには、スイッチバック方式で乗り切りましょう。
スイッチバックUターンの図を提示します。
センターラインもないような細い道でのUターンです。
(1) 上り坂を上りながら、進行方向の45度くらいの角度で反対車線の端で停止します。
(2) 両足は届かないので山側に片足を着きながら、後ずさりするようにバックします。
バックが下り方向になるので、ブレーキを緩めれば自然にバックします。
このときに、ややハンドルを戻して、車体角度が道路に対して直角に近いくらいになるようにします。
(3) 態勢を整えて、右折する要領で発進すればUターン完了です。
このやり方なら、狭い道でも無理なくUターンすることが出来ます。
平坦な道でも使えますが、上り坂では必須のテクニックです。
是非、習得してください。
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