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スーパーカブはバイク業界のナンバーワン商品だという物語

スーパーカブはバイク業界のナンバーワン商品だという物語

スーパーカブをバイクの種類のカテゴリとして取り上げることに、異論を持つ方もいらっしゃることでしょう。

しかし、シリーズの生産台数は9000万台に及び、二輪車としての生産量はもちろん世界一だし、一つのシリーズの輸送用機器としても世界一の生産台数なので、これは一つのジャンルとして取り上げても不自然ではないと、管理人は思います。

しかも、最初の製品発売が1958年ですが、それから約60年間に渡って、部分改良は加えられましたが基本設計が継承されているのは素晴らしいことだと思います。

そういうわけで、スーパースポーツ、オフロード、アメリカン、スクーターなどと並んで、スーパーカブをバイクの種類として、カテゴリ分けをすべきだと思っているのです。

スーパーカブ誕生

終戦から13年後の昭和33年(1958年)、戦後復興の途上にあった日本でスーパーカブは誕生しました。

その当時の日本のバイク業界は、群雄割拠の様相でたくさんのバイクメーカーがひしめき合っていました。
この頃人気があったバイクの一つが、ラビット号、シルバーピジョン号などのスクーターでした。

そんな時代に、ホンダでは、CUB(カブ)と称する自転車に取り付ける補助エンジンを売り出してヒットしました。

まぁ、この辺までは、ホンダもどんぐりの背比べの一員だったのですが、ライバルたちを凌駕するすごい製品がホンダから発表されました。
それが、スーパーカブC100だったのです。

バイクの総生産台数が月産2万台にも満たない当時の日本で、ホンダの営業担当だった藤沢は、スーパーカブの販売目標を月産3万台としたのです。
初年度は10万台程度で目標未達でしたが、翌年度には年間40万台の大ヒットで、目標の36万台を軽々とクリアしてしまいました。

「そば屋の出前が片手で運転できるバイクを作ろう」

本田宗一郎が掲げた開発コンセプトが、片手で運転できるバイクだったと言われています。
当時は、そば屋の出前といえば、自転車の片手運転が当たり前で、むしろどれだけ高く積めるかを競っていたような面もありました。安全運転意識が向上した現代ではありえない発想ですが、当時の時代背景では許されたようで、実際にホンダでは、スーパーカブの販促活動でこんな宣伝をしていました。

時代が変わって、バイク用出前機が開発されて両手運転が可能になっても、蕎麦屋の出前のバイクは、やはりスーパーカブのようです。



スーパーカブの特徴は

当時のバイクの常識をすべて打ち破ったと言っても過言ではありません。

低燃費で丈夫な4サイクルエンジン

当時は、50ccのバイクは2サイクルエンジンが主流でした。
構造が簡単なのでコスト的なメリットが優先されたようです。

そんな時代に、低価格の50ccクラスで空冷4サイクルOHVエンジンで4.5PSとは、業界にとっては非常識であり、驚きでした。
ライバルの2サイクル50cc車は、大体2PSほどだったのですから。

しかも、価格は55,000円とライバル車とほぼ同じだったのです。

当時の燃費の記録がないので分かりませんが、リットル当たり50kmくらいは走っていたのではないでしょうか。
とにかく、ガソリンを未消化のまま撒き散らしていたような、2サイクルエンジンとは、明らかに別物の性能を示していたのです。

シーソー式ギアペダル

スパーカブは年式によってギアの違いがありますが、シーソーペダルと言われる、前後に踏み代があるペダル構造が特徴です。

基本的は、前方を踏めばシフトアップ、後方を踏めばシフトダウンです。

普通のバイクは、つま先で蹴上げてシフトアップをしますが、つま先を汚したくない靴の場合は、躊躇してしまいます。
というよりも、躊躇するような靴でバイクに乗るなということなのですが、大衆車を狙ったスーパーカブでそんなことを主張したらみんながそっぽを向いてしまいます。

そこで、雪駄履きのそば屋の職人さんでも、草履のお坊さんでも乗れるように、蹴上げる必要がない、前後に踏み代があるシーソーペダルにしたのだと思います。
まさに、バイクの常識をくつがえす発想ですね。

初期のスーパーカブは(年式や車種によって違いがあります)ニュートラルから後方に踏んで「N⇒1速」、走行中に前方に踏むと「Nを飛び越えて1速⇒(N)⇒2速」に入りさらに「2速⇒3速」と続いていたと記憶しています。

しかし、停止状態からいきなり前方に踏んで2速スタート、その後3速が常用という使い方をしている人が多かったように思います。
街乗りではシフトダウンの必要が殆ど無いんですね。

シーソー式ギアチェンジペダルがどうして普及しないのかを考えてみました。
スポーツバイクとなると、蹴上げるシフトアップのほうが動きが速いような気がします。
また、大衆車であればスクターのようにギア無しのオートマチックが望ましいし、技術や材質の発達によってオートマチックの性能も上がり、現代では中途半端なシーソーペダルが普及しなかったのではないかと管理人は考えています。



自動遠心クラッチ

片手運転のそば屋の出前となると、スロットルグリップがある右手だけで運転しなければなりません。
通常、右手にはアクセルと前輪ブレーキレバーがあります。
さらに運転中に操作が必要になるのが、ウインカーランプのスイッチです。

だから、スーパーカブのウインカースイッチは、右手側にあるのです。
上に押し上げると「右折」、下に下げると「左折」です。
ちなみに、自動復帰機構はありませんから、ライダーが自分で戻さなければなりません。上の写真では何もありませんが、ウインカースイッチの下の空間には、2年後に発売されたC105ではセルボタンが付けられます。

 

ギア付きのバイクにはクラッチが必要ですが、スーパーカブには左手のクラッチレバーがありません。

エンジンの回転数が下がると遠心力が低下してクラッチが切れる「自動遠心クラッチ」を採用しているので、ギア式でありながらクラッチレバーがない構造を可能にしたのです。

この、自動遠心クラッチの開発には相当苦労したようで、本田宗一郎がいきなり路上に設計図を描きはじめ、技術者と議論をしたということです。

レッグシールド

聞きなれない言葉ですが、スーパーカブのカウルとも言うべき白い大きなプラスチックです。

スーパーカブの骨格は、白いレッグシールドを外すと、下図の点滅で示すように、フロントフォークと車両本体とは、一本のパイプでつながれているだけなのです。当初、本田宗一郎はこのデザインでヨシとしていました。
しかし、藤沢専務の奥さん(本田宗一郎の妻さちさんという説もある)が、「むき出しのエンジンが鶏の臓物のようで気持ち悪い」といったことを受けて、カバーを付けて見えないようにした。

技術者としては自慢のエンジンでしたが、一般大衆向けに販売しようと狙っていた車両が、大衆の代表でもある主婦層から嫌われては支障があるとの経営的な判断をしたのは流石です。

こうして、見かけの判断から付けられたレッグシールドでしたが、思わぬメリットをもたらしてくれたのです。

泥除けの効果

雨の日にズボンが汚れにくい。
流石に、この構造では靴は汚れてしまいますが、特に女性陣には好評だったのではないでしょうか。

エンジンの空冷効果

空冷エンジンに効果的に風を集中する効果がありました。
エンジンの真上に穴が開いており、熱気を逃がす作用もあります。

スカートや和服でも乗りやすい

無骨な機構部品であるエンジンを見えなくして、平滑なカバーで覆いました。
通常のバイクのように、サドルの前に燃料タンクがなく、前が開いていますから、馬に乗るように跨がらないで、腰掛けるように乗ることが出来ます。

この特徴が、女性層の獲得はもとより、法事のときに和服のお坊さんの移動手段として活躍しました。

 

スズキのカブ、ヤマハのカブ

ホンダのスーパーカブの大ヒットを受けて、ライバルメーカーが指を加えて見ているはずがありません。

スーパーカブを分析して、同じようなものを作るのは、競争社会ではアタリマエのことです。

スーパーカブは、発売から50年以上経った2014年に、立体商標権が認められました。
立体商標権は、通常は「ヤクルト容器」とか不二家の「ペコちゃん人形」のように形状そのものが重要な要素である物品に認められることが多く、バイクのような機能性工業製品では極めて稀なことです。

スズキのカブ

スズキでは、ホンダのスーパーカブから遅れること15年の昭和48年(1973年)、スズキバーディを発売しました。
形はスーパーカブそっくりでした。

形がそっくりでも、エンジンは2サイクルだし、機構部品を含めてまったく同じ物ができるわけではありませんが、まぁパクリと言われても仕方ないでしょうね。

この件に関しては、意匠権侵害として裁判沙汰になり、スズキが負けています。

▲意匠権侵害禁止等請求事件「ホンダスーパーカブ対スズキU」(両意匠を全体的に観察した場合、両意匠は視覚を通じての美観を同じくするものと認められるから、類似するものというべきである。)<東京地裁>
-昭和43年(ワ)第11385号、昭和48年5月25日判決-[上・中・下](18、23、30日)

その後、和解したのか、ギリギリの外側を狙っているのか分かりませんが、スズキバーディの生産は続きます。

スズキバーディの発売から10年後の昭和58年(1983年)には4ストローク車を加え、そこから21年後には2ストローク車は廃盤として、4ストロークのみになりました。

現在(2017年6月)でも、バーディ50は販売されていますが、スーパーカブとはイメージが変わっていますね。

ヤマハのカブ

ヤマハでは、ホンダのスーパーカブから遅れること2年の昭和35年(1960年)に、モペットMFを発売しました。

これもスーパーカブにかなり似ているのですが、その5年後に発売した「ヤマハ・メイト」はヤマハのカブと言っても良い程に似ています。

モペットMFを改良して昭和40年(1965年)に鳴り物入りでヤマハメイトを発売しました。
その際には愛称を全国から公募して、「ヤマハ・メイト」に決まりました。

同時に、ヤマハメイトのうたが作られ、その当時のTVCMが耳に残っています。

♪乗ってる、乗ってる、乗ってる、乗ってる「ヤマーハメイト」。
♪乗ってる、乗ってる、乗ってる、乗ってる「ヤマーハメイト」。
メイトに乗れば安上がり。

そのものズバリの動画を見つけましたのでご覧ください。

動画の映像を見ると、初めて見る人にとっては、ホンダ・スーパーカブと区別がつかないと思います。

しかし、ヤマハメイトは、らくらくメイト、タウンメイト、ニュースメイトなどと名前を換えましたが、2008年に43年間の歴史を閉じて生産を停止しました。

現在、このビジネス分野のバイクは、スクーター仕様のヤマハ・ギア(GEAR)シリーズが引き継いでいます。

バイクの種類を10個のカテゴリ分けして詳しく解説

バイクの種類の解説をまとめたページです。
アドベンチャーツアラー、アメリカン&クルーザー、スクーター、原付一種&原付二種、オフロードバイク、巨大バイク、スーパースポーツ、ネイキッドバイク、レトロ&クラシック、その他



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